探偵小説「幻影城」創刊のことば

江戸川乱歩の「二銭銅貨」が発表されて、わが国にも欧米並の創作探偵小説が、可能だと立証されてから五十余年になる。この間、幾多の作家が登場し、消えていった。これら作家の残した優れた作品は数限りなくある。だが、江戸川乱歩や横溝正史などごく一部の例外をのぞいて、数多くの作家はまったく忘れられ、作品はうずもれてしまっている。
良き文学作品は長い風雪に耐えて生き続けるものである。近年探偵作家の再評価が始まり、夢野久作小栗虫太郎など個性豊かな作家が、読者の支持を得て全集が刊行された。これらの作家は作品の数も多く、そのうちの幾つかの作品は、探偵小説史上に燦然と光り輝いている。この再評価は当然すぎる程当然のことだが、おそきに失した感がないでもない。
再評価され、全集が刊行された作家はまだラッキーである。しかし、探偵文壇にデビューした当時、新鋭作家と期待されながら、何らかの理由で作品を幾つか残して消えた作家も多い。これら作家の作品は、雑誌のバックナンバーをさがして読むほか手はない。だが、雑誌のバックナンバーはどこへ行ってもないのが現状だ。
これら多くのうずもれた作品の中から、忘れ去られた名作を発掘して、読者に提供すると共に、作家再評価の場として、評論家や研究家の戦後の新しい視点に立った最新の研究成果を、紹介することを目的に、「幻影城」を創刊した。
なお、作品発掘のほかに、出来うれば新しい推理小説の方向を、指し示すような作品をもあわせて紹介したい所存である。読者の御支援を切に願うものである。

昭和五十年二月

「幻影城」編集部


「幻影城」目次リスト
四半期(三ヶ月)毎に頁表示されます。

1975年の「幻影城」第1/第2/第3/第4四半期目次

1976年の「幻影城」第1/第2/第3/第4四半期目次

1977年の「幻影城」第1/第2/第3/第4四半期目次

1978年の「幻影城」第1/第2/第3/第4四半期目次

1979年の「幻影城」第1-3四半期目次


表紙へ